富山弁と一言で言っても、地域によって、
少しどころかだいぶ違うものです。
富山県は、県を東西に分けて
東地区を “呉東(ごとう)”
西地区を “呉西(ごせい)”と呼びます。
富山県をちょうど東西に二分する位置に、
「呉羽山(くれはやま)」があります。
呉羽山を中心として東と西が分かれ、
呉羽山より西側を呉西(ごせい)、
東側を呉東(ごとう)と呼びます。
上の富山県地図で説明すると、向かって
富山市(を含む)より右側が呉東です。
それ以外の左側が呉西になります。
呉東(ごとう)と呉西(ごせい)では、
富山弁もだいぶ違います。
また、山間部や沿岸部など地域によって、
方言が違うので、言葉が通じないような
感覚も無いとは言えません。
富山弁は、とても特徴的な表現もあり、
楽しい一面もありますのでご覧ください。
【特によく耳にするであろう富山弁】
【富山弁】 | 【共通語訳】 | 【会話での使用事例】 |
な~ん |
いいえ(NOの意味) | お腹空いた?“な~ん”大丈夫やわ。 |
いいがけ? | いいんですか? | これもらっても“いいがけ?” |
いいがに | 構わないのに | 気にしなくても“いいがに” |
いいちゃ(肯定) | いいですよ | それ食べても“いいちゃ” |
いいちゃ(否定) | 結構です | 今は“いいちゃ” |
あいそむない | 寂しい、愛想のない | あの人“あいそむない”のぅ~。 |
○○け? | ○○ですか?なの? | “どういうことけ?” |
あのっさん | あの人 | “あのっさん”怒りっぽないけ。 |
○○られ | ○○してください、なさい | お腹いっぱい“食べられ” |
だいてやる | 出してあげる、奢ってあげる | 今日はオレが“だいてやる”ちゃ。 |
かいこする | 交換する | このカードと“かいこする”け? |
うい | 苦しい、辛い | あさから何やら“うい”ちゃ。 |
きときと | 新鮮、活き活き | この刺身“きときと”やのぅ~。 |
こわくさい | 生意気 | あそこの店員何やら”こわくさい”のぅ。 |
こんとくない | 醜い | 性格はいいのに“こんとくない” |
さんにょ | 精算、お勘定 | マスター!“さんにょ”してくれんけ? |
しょむない | 味(塩気)が薄い | この紅鮭“しょむない”のぅ~。 |
せんまい | しましょう | みんなで草むしり“せんまい”け。 |
だちかん | ダメ | 何回やっても“だちかん”ちゃ。 |
だやい | だるい | 昨日から身体が“だやい”わ。 |
ちゃべ | 言いふらす | あの人“ちゃべ”だから気ー付んにゃ! |
ちょっこ | 少し | “ちょっこ”休んでいかれま! |
ちんと | おとなしく | しばらくここで“ちんと”しとられ。 |
つかえん | 大丈夫 | 心配せんでも“つかえん”よ。 |
つまつま | ゆっくり | 焦らず“つまつま”としとられ。 |
つんだって | 連れだって | いつまで親と“つんだって”行くが? |
てきない | 元気がない | 今日は朝から“てきない”ちゃ。 |
てっしゅ | 小皿 | そこの“てっしゅ”取ってくれんけ? |
てんでに | 各自で | 明日は“てんでに”現地集合してくれんけ。 |
とっぺ | 豆腐 | 暑い日は“とっぺ”に限るのぅ。 |
とんぼ | 先っちょ | 釣り竿の“とんぼ”が折れたわ。 |
とうしに | 頻繁に、しょっちゅう | あの新聞社“とうしに”勧誘しにくるのぅ。 |
どもこもならん | どうしようもない | こうなったらもう“どもこもならん” |
なごなる | 寝そべる | ソファーに“なごなる” |
なもない | なんでもない | そんなことぐらい“なもない”ちゃ。 |
ねぶか | ねぎ(野菜の) | 鍋に入れる“ねぶか”あったけ? |
ねまる | 座る | 膝が痛くて“ねまる”こともできんちゃ。 |
のすと | 泥棒 | 畑のスイカ“のすと”にやられたちゃ。 |
はがやしい | はがゆい、悔しい | この信号長すぎて“はがやしい”のぅ。 |
はごむく | 逆らう、反発する | 新入のくせに“はごむく”ヤツおるのぅ。 |
はったおす | 張り倒す | あいつ“はったおして”やりたいわ。 |
へしない | しょうもない | なんとまあ“へしない”ヤツだちゃ。 |
まいどはや | いつもどうも | “まいどはや”今日は何にするけ? |
またいする | しまう | 大切なプレゼントを“またいする” |
まなしに |
しょっちゅう |
歳とったら“まなしに”病院行っとるちゃ。 |
まめなけ? | 元気ですか? | 久しぶりやね。“まめなけ?” |
めぐら | まわり | 家の“めぐら”中、雑草だらけやちゃ。 |
やんばい | 良い、よかった | 無事出産できて“やんばい”のぅ。 |
よさる | 夜 | うちの子“よさる”になると元気になるちゃ |
よばれる | ごちそうになる | ”よばれる”ばっかで申し訳ない。 |
わやく | 乱雑なこと | 娘の部屋はいつ見ても“わやく”だわ。 |
わらびしい | 若々しい | あの人いつ見ても”わらびしい”ね。 |
ん~な | 全部 | ちょっこじゃないが“ん~な”やよ。 |
富山弁いかがでしたか?
実は、上記の表にある富山弁以外にも、
まだたくさんあります。
でも、富山県で生まれ育ち、
現在も富山で暮らしている私でも、
知らない方言があります。
普段は使わないような富山弁については、
年齢や住む地域によって違います。
私は、昭和36年生まれの還暦ですが、
私でさえ聞いたことがない富山弁も
あるくらいです。
なので、上記富山弁を列記した表には、
【特によく耳にするであろう富山弁】
というタイトルをつけたわけです。
どの地方でもそうだと思いますが、
高齢者になればなるほど方言も複雑で、
聞き取れなくなるものです。
さて、富山弁については、
いくつかの特徴があるので紹介します。
「な~ん」
「○○け?」
「○○ちゃ」
という3つの言い回しをよく使います。
まず「な~ん」について・・・
この「な~ん」については、
富山県人と話す機会がある場合必ず遭遇する
と言っても過言ではないと思います。
「な~ん」の意味は、上の表にもあるように、
いいえ…即ち否定を意味します。
英語で言う「No」やフランス語の「Non」と、
同じと思ってください。
「な~ん(Na~n)」という響きが、
ほわっとしたやさしい感じがしてかわいい!
という県外からの意見もあるようです。
使い方としては、こんな感じです。
・お腹空かんけ? “な~ん”大丈夫やよ!
(お腹空かない?) (いいえ、大丈夫です)
・怒っとるがけ? “な~ん”別に!
(怒ってるの?) (いいえ、別に!)
・一緒に行かんけ? “な~ん”いいちゃ。
(一緒に行かない?) (いいえ、結構です)
疑問とか質問を投げかけた後の返事に使う
という場合が多いので、よく使います。
また、
・最近綺麗になったとみんな言っとるわ!
・最近社内で仕事頑張っとると評判だぞ!
というような誉め言葉に対しては、
“な~ん”そんなことないちゃ。
(いえいえ、そんなことはありません)
という謙遜の意味でもよく使います。
次に2つ目の「○○け?」について…
「○○け?」
上記「な~ん」の使い方にも出てましたが、
・お腹空かんけ?
・怒っとるがけ?
・一緒に行かんけ?
の問いかける言葉の語尾に“け”がついてます。
“け?”というのは、
標準語で使うならば、
ですか?ませんか?しませんか?
といった場合に使うことが多いです。
“いいがけ?”
という富山弁もよく使いますが、この場合は、
「いいんですか?」
という意味になります。
「いいが?」というのは「いいの?」
という意味で“け”がつくことで「ですか?」
というちょっと丁寧な言い方になります。
ざっくりと言えば、語尾に“け?”が付く場合は、
あなたに対して、問いかけてるのです。
そして、どちらかと言えば相手に対して、
丁寧に問いかけているのです。
“け?”については頻繁に耳にすると思います。
3つ目は「○○ちゃ」についてです。
「○○ちゃ」についても、とてもよく使います。
“いいちゃ”
という富山弁は、
「いいですよ」
という肯定の意味になりますが、
「結構です」
という否定の意味でも使います。
ちょっと紛らわしいですね。
その他肯定や否定の意味以外でも頻繁に使われ、
使い方例としては以下のようになります。
「知らんちゃ」 ⇒「知らないよ」
「わかったちゃ」⇒「わかったよ」
「わからんちゃ」⇒「わからないよ」
「できんちゃ」 ⇒「できないよ」
「つかえんちゃ」⇒「大丈夫だよ」
こんなふうにどうも言葉(主に動詞)の未然形に
助動詞がついた語尾につけることが多いようです。
大まかには「○○だよ」とか「○○です」
といった意味に使う場合が多いです。
「○○ちゃ」については、本当によく使うので、
富山へ来県された場合には必ず耳にするでしょう。
最後に、もう一つ。
「○○られ」とか「○○しられ」という言葉も
よく使われる富山弁です。
「○○られ」については、
「沢山食べられ」⇒「沢山食べてください」
「休んでいかれ」⇒「休んでいってください」
「気ーつけられ」⇒「気をつけてください」
といった、相手を気遣う場合に使うことが多く、
やさしい意味合いが含まれています。
一方
「○○しられ」については、
「我慢しられ」 ⇒「我慢しなさい」
「ちんとしられ」 ⇒「おとなしくしなさい」
「早く帰ってこられ」⇒「早く帰ってきなさい」
と言ったように、どちらかと言えば命令調で、
指図する場合に用いる言葉になります。
さて、ここまで大まかに【富山弁】についての、
使い方や解説をさせていただきました。
まとめますと、【富山弁】は、国内にある方言、
例えば「東北弁」にあるような言葉自体が普段使う
共通語と大きくかけ離れているまるで外国語のような
方言とは違います。
もちろん中には、共通語とは全く違う言葉もあり、
理解に苦しむこともあるかとは思います。
それでも今お話した、
「な~ん」
「○○け?」
「○○ちゃ」
そして最後の、
「○○られ」
「○○しられ」
の使い方に慣れれば、それほど違和感なく、
意味を理解できて会話もできるはずです。
尚、私自身は富山の東地区を“呉東(ごとう)”
在住のため、西地区を“呉西(ごせい)”及び
海岸付近の特殊な方言については正確には
把握しておりません。
また、
【特によく耳にするであろう富山弁】
に書いた内容についても、地域によっては若干違う
表現もあることは、ご理解いただきたいと思います。
その他の地域の富山弁についての情報を得たのちに、
また投稿させていただくかもしれません。
富山弁のご理解に少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。